百万石夢物語〜夢は廓の中で〜
心無い主の抱えた多額の借金のために 自らその身を捧げた定子。 何を想い日々を過ごすのか・・・。 悲恋に満ちた夢物語。 |
鏡に映る自分に言い聞かせる。 『これは仕事なのだ』と・・・。 定子、お客だよ! |
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こんな生活から逃れたい。 でも、家に残してきた者たちの 為にも、一日でも多く働いて借 金を返さねばならない。 |
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わいは浪速洛や。 堺の商人のボンボンやねん。 親父が加賀へ商売しに来よる ゆうさかい、わいも一緒につい てきてん。 今日の客はいかにも軽そうな 青年だった。 |
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あんさん、そんなしょーもない顔 して、どないしましてん。 ・・・自分はどんな顔をしているの だろう。さっき、鏡の前で仕事なの だと割り切ったではないか。 |
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まぁ、とりあえず、行こか? | |
では、ごゆっくりお過ごしください。 まず、一曲・・・。 |
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なんや、おもろそうやな。 わいに叩かせーな。 |
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いえ、お客さまはそちらでごゆっく り。私が笛でも演奏いたします。 |
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ほな、そうしよか。 | |
一服したとこで、そろそろどうや? | |
『堪えろ定子。 これは仕事なんだ・・・・』 そう、自分に言い聞かせる。 |
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なんや、もう終いの時間かいな。 つまらんの。夜はこれからやっち ゅうのに。 こしてまた「今日」という夜が終 わる。 |
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楽しかったで。また来るから。 | |
ほんまやからな! また必ず来るさかい!! わいのこと忘れんといて。 ええ、お待ちしております。 そう言って見送った客は数知れず。 でも、私が待っているのは貴方では ないのです。 私が待っているのは・・・・・・ |
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浪速洛:縁さま ありがとうございました。そして、お疲れ様でした。 あんな 昭和57年来の大型台風だったとは・・・よい思い出ですね。 終 |
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